http://oka.web.infoseek.co.jp/



プロジェクトの概要。



プロジェクトを進めるうえで行った取材活動の報告。


「K-dom」にまつわるよくある質問と答え。



岡原ゼミについて。



K-domの通信販売(申し訳ありませんがただいま準備中です。三田祭終了後、然るべき期間の後に販売予定です)

 

 

 
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mail to:mailto:homoaffectus@hotmail.com


What's?

 11/21-24に行われる「三田祭」でオリジナルデザインコンドーム3000個を売るプロジェクトです。デザインは三種類あります。一種類につき1000個です。また販売価格は一個につき100円を予定しています。販売は423教室および路上で行います。

・コンドームにはりついた「異性愛主義」を脱構築します。 
・コンドームするのが 「なぜ軟弱なんだ?」。 とにかく 「つけろよ。」 
自由なセックスと感情表現 (岡原正幸 2003 WEB版) 「コンドームの使用は、セックスするパートナーどうしの間にコミュニケーションを生む」 

マイノリティver.

「K-dom」には「マイノリティの使用もおすすめできます」という但し書きがついています。これはセクシャル・マイノリティが使用する性感染症予防具(男性-男性の場合)が、法律上は存在しないという事実に抗議する意味合いがこめられています。本来はもっと直接的な表現だったのですが、薬事法に抵触するおそれがあるということで柔らかい表現にとどまりました。

慶應ver.

三田祭で販売する、という大前提があったため、慶應というブランドを強くイメージさせるデザインにしました。ロゴマーク入りのグッズの売れ行きが好調である、ということに対する疑問、アンチテーゼという側面もあります。

メッセージver.

とにかくコンドームを付けなくてはならない、というメッセージを大々的にデザインへ落とし込んだものです。時折、イベントなどで配布されることもありますが、それらはオシャレなもので、現実に対する訴求力にかけます。ノベルティにとどまらず、業者に発注した実用品としてコンドームに「つけろよ」とデカデカと記すことで、強くアピールできるのではないかと考えました。さらに「果たしてコンドームをつけさえすれば良いのか?」という複雑な問題を投げかけることもねらいとしてあります。

リンク(主にHIV/AIDSに関わるもの)


厚生省AIDS治療薬研究班:http://www.iijnet.or.jp/aidsdrugmhw/

HIV感染治療研究会:http://www.hivjp.org/

国立国際医療センター・エイズ研究開発センター:http://www.acc.go.jp/

ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP):http://www.bekkoame.or.jp/~lap/

HIV・AIDS関連リンクとニュース:http://www.arsvi.com/0y/hiv2003.htm

 


リサーチ

 K-domプロジェクトを進める上で、文献にあたるだけではなく、色々な方のところへ取材活動を行いました。ここで簡単に紹介します。

 小学校における性教育 小宮智恵子教諭(文責:中嶋)

 小宮智栄子 氏
 埼玉県新座市立野火止小学校養護教諭。10年前から本格的に小学校で性教育を
 始め、公民館等で、保護者対象のセミナーも行っている。2001年から、「命の
 教室」を手がけている。生活に密着したLife Skill教育と、自分に自信を持つ、
 Self-esteemを高める教育をモットーに、若者から若者へ、正しい知識を教え
 ることが出来る環境を目指して活動している。

 赤枝恒雄院長 インタビュー(文責:中嶋)

 赤枝恒雄 氏
 赤枝六本木診療所院長。コンドームが破損した場合、無料で中絶手術を受ける
 ことができるコンドーム、ガールズガードを販売している。また、エイズ検査
 が無料で受けられるガールズガードライブや、中絶や性感染症などの相談を
 無料で行う、街角健康相談室を主催しており、その幅広い活動が注目されている。
 著書に、「子供のセックスが危ない」「ガールズガード」がある。

 http://www.akaeda.com/

 ガールズ・ガード・ライヴ 取材報告

 

 HIV/AIDS研究会(別ページへ)
 
講師:
 村上未知子 氏(東京大学医科学研究所附属病院) 
 有馬美奈 氏(都立駒込病院) 


小学校における性教育 小宮智恵子教諭(文責:中嶋)

小学校における性教育

取材班中嶋の母の同僚である、小宮さんが、積極的な性教育を行っていると聞き、お話をうかがいました。
小宮さんは、小学校で保健の先生をなさっています。以下は、話していただいた内容をまとめたものです。

小学校でのエイズ教育=皆無

小宮さんは10年前から性教育(エイズ教育含む)開始
小学校一年生から少しずつ体のことや、生命について教えていく→そうすることで、高学年になってから、スムーズにエイズ教育を始めることが出来る
「性=いやらしい」という感情を無くす
「体を知らずして自分を大事にすることは出来ない」
    しかし
知識があっても、「わかってはいるけど・・・」「NOと言えない・・・」
    そこで

命の教室

児童館で、夏休みに三回行う 劇仕立てにすることで、子どもをひきこませる
声をかけられたら、誘われたら等、様々なシチュエーション
「こんな時あなたならどうする?」考える力育てる

教える側には、大学生や女子高生も
若者が自分の経験を語ることで、影響力&説得力増す
大人には聞けないことも、年が近いお兄さんお姉さんには聞ける
「これが知りたかったんだ」「ずっと悩んでいたけど、おかしいことじゃないんだ」
若者でも、いかにも真面目な人は選ばない
今時の人や、皆に好かれそうな人を選ぶ=今時のオシャレな子たちが話してくれる 魅力

目的 自分を好きになって欲しい
命の誕生の講義を聞いた小学生(低学年)が、「今まで自分のこと嫌いだったけど、好きになれた」親が離婚してつっぱっていたけれど、生命に素直に感動
できちゃった婚が増えている→我慢できない人が増えている証拠→早くに離婚してしまう→子どもは、自分は望まれて生まれたんじゃない、と思ってしまう
性欲はコントロールしなければならない、と教える 色々な人と付き合って、見極めることの重要性 結婚、離婚についても低学年に教える→様々な家族形態
生命について知る→自分を大切に出来る「self-esteemを持たせること」が究極の目標

性は生命につながるもので、避けて通れない 自分と他人の体を大事に思う気持ちが大切
ex. パートナーが変わるたびにエイズ検査して確認しあう 思いやりを実践に

歪んだ情報を無くす
献血することでエイズ検査が出来る(献血をすると、エイズ等の検査結果が出る)→これを悪用する人が多い
          検査をくぐりぬけてしまう血液もある
          疑わしいなら、献血には行かないで

問題 歪んだ情報が一度入ってしまうと、正しい情報が入らなくなる
    一番来て欲しい子たちは聞きに来ない
    どうすれば来てもらえる?→一部で盛り上がるだけでは、効果がないのでは?
    もっと広範囲で広まって欲しい
    感染したかも、と思ったとき、どこへ行けばいい?誰が教えてくれる?誰に相談できる?
    性教育が出来る教師がいない どうやってやるのかわからない

私と小宮さんは、性教育の現状について、話し合いました。問題点は、尽きることなく挙がります。
この問題を解決出来るのは、「実践」のみだと思いました。話し合うだけでは、何の助けにもなりません。
こうした積極的な運動が活発化すれば、現状は、大きく変わるでしょう。しかし、この「実践」が一番難しいんですよね~。
小さなことでも、出来ることから始めたいですね。


赤枝恒雄院長 インタビュー(文責:中嶋)


赤枝恒雄院長インタビュー


Q
一番エイズ教育を必要としている、危険なセックスをしている若者は、なかなか教育の場に足を運びません。関心がある人を教育して、そこから少しずつ広がれば良いのかもしれませんが、それでは遅い気がします。どうすれば、若者を集めることが出来ますか。

A
検査に来る10代は、2、3年で10人程度。彼らに検査を受けさせるには、こちらから向かっていくしかない。ジュースが飲めるとか、特典をつけて回っている献血車には、多くの人が訪れる。エイズの検査も、同じように、サービスをしないと、若者は受けてくれない。

まずは、関わることが大事で、医療機関が街に出かけるべき。だから、クラブイベントをやっている。子供たちの側に寄っていかないとだめ。

 


Q
先進国で、エイズ感染率が下がらない、ということに関して、医療が発達し、エイズが「死の病」ではなくなったことが挙げられると思うのですが、こうした矛盾をどのように埋めていけば良いと思いますか。

A
先進国が薬を作るだけではなく、途上国、特に中国、アフリカのエイズをなんとかしないとだめ。日本でのエイズ、アフリカでのエイズ、ではなく、外国人とのセックスが増えているのだから、ボーダーレスの病気になる。同じ地球号に乗っている人間として、エイズは、他の国の問題ではない。

エイズ治療は、お金がかかるし、本当に大変。エイズだけは、かかってはいけない。治療法があると安心するが、実際は、エイズの薬は、量も多く、そのうち、詰まって飲めなくなる。美味しいものでさえ毎日食べられないのに、薬を毎日飲めるわけがない。これは、患者の映像を見せて、どれだけ大変か、見せるべき。


Q
先日、国連大学のポジティブライブ展を見に行ったのですが、そこでは、世界のエイズ患者の方が、エイズと共に生きる日常を語っていました。本人が外に出て、アピールすることも、効果的だと思うのですが、やはり、それが出来る環境が、整っていないと思います。

A
未だに差別があるから、難しい。途上国では、教育する人間が、20代半ばで死んでしまうため、教育で偏見を無くすことが出来ない。ウガンダでは、「わが国はエイズで滅びる」と言っている。

10代の感染者は女性が多い。しかし、検査を受けるのは、男性ばかり。体の構造上、女性のほうが移りやすい。糜爛が出来ていたら、危ない。若者が発病するのは、かわいそう。生理中のセックスは特にだめ。こうした知識をきちんと伝えなければならない。


Q
エイズパニック以来、エイズへの関心が薄れていっているのは、何が原因だと思いますか

A
それは日本人の体質。狂牛病も、エイズも、一度盛り上がったら騒ぎ、治まるとすぐ忘れてしまう。国のエイズに対する予算が減っていることは、関係ない。検査を受ける人も、コンドームを使う人も、どんどん減っている。正しい知識があれば、危険なセックスに対して、NOと言えるはず。曖昧な知識ではダメ。若者にとって、正しいセックスではつまらないし、知識を伝えるルートがない。AVは、過激な上、男のレイプが多く、間違った知識を与えている。レイプや、アナルセックスについて、知識を与えるテロップを載せないと、鵜呑みにしてしまう。日本はいい加減な国で、週刊誌やスポーツ新聞の内容はひどい。性教育は規制するのに、こうしたメディアに対して何もしない。性の情報は溢れているのに、誤解がある。


Q
芸能人の発言は、影響力があるので、ちょっとした一言が、差別を助長してしまうことがあると思うのですが・・。


A
芸能人を教育していくことも必要。エイズ問題に、積極的に関わりたいタレントもいるが、イメージの問題があるから難しい。エイズの番組をやろうとしても、スポンサーがつかない。乳がんのキャンペーンが盛んに行われたのも、乳がんは恥ずかしい病気ではないから。


Q
最後に、三田祭来場者に、一言お願いします。


A
普通の子の約20%がクラミジアを持っていること、40%が子宮ガンのもとになるパピロンウィルスを持っていることを、お母さんたちがわかっていない。「まさか」という人がエイズになるのだから、人事ではない。セックスを経験した子なら、エイズになる可能性は高い。コンドームをしなければ、エイズになる。「エイズの前にクラミジアあり」とも言われている。性病は治る、と思っている人が多いが、治らない性病があることも知るべきだ。


GIRLS GUARD LIVE @ 恵比寿みるく(文責:中嶋)

赤枝院長が主催している、ガールズガードライブに行ってきました。

毎月、第一月曜日に開催されており、入場料は、700円です。この700円には、ライブエイズ検査ネイルアートドリンクのすべてが含まれています。これなら、若い人も、気軽に行けますね。通常のクラブ入場料は、2000円~3000円が相場です。

会場に入ると、まず、赤枝院長にお話をうかがいました。(取材記参照)

次に、エイズ検査を受けます。
病院で受けると、8000円はかかるそうです。ここでは、採血をして、15分程度で結果がわかります。住所や本名を書く必要はなく、ニックネームを記入するだけで、検査を受けることが出来ます。これで、プライバシーも守られる、というわけです。

採血は、目的が何であれドキドキ。

そして、ドリンクを取りに行ったら、音楽を聞きながらゆっくりと時間を過ごします。検査を受けた人は、ネイルアートのサービスを受けることが出来ます。ネイルアーティストの方も、エイズの活動を行っていて、興味深い話をしてくださいました。オシャレで、肩の力が抜けているけれど、エイズについて、じっくり考えることが出来るイベントなのです。

そして、エイズ検査の結果の封筒を受け取ります・・・!!!

受け取る際に、
「ここでは開かないで、クラブを出たら一人で見てくださいね。」と声をかけられます。
友達同士で、「ねぇねぇ、陽性だったぁ??どうだったぁ?」なんて、見せ合ってはいけません!

最後に、抽選会が行われます。
赤枝院長の著作、「ガールズガード」「子供のセックスが危ない」や、オリジナルTシャツ、ガールズガードライブ参加アーティストのCDなどが当たります。
本は、私も読んだのですが、とっても勉強になるので、抽選で当たらなくても?ぜひ読んでくださいねー。


エイズ検査は、まめに受けることが大切です。(特に、パートナーが変わった時!)
音楽も楽しめるこのイベントなら、彼氏や彼女を誘うことも出来ますね。
「エイズ検査受けに行こう!」と言うと、もしかしたらビックリされるかも・・・だけど、
「クラブに行こう!ついでにエイズ検査も受けられるんだよ。」と言えば、関心を持ってくれると思います。
こうした工夫が、若者とエイズの溝を埋めているのです。

みるくの他にも、横浜のGASPANICで、第三土曜日に、同じイベントが行われています。
みるくも、GASPANICも、とても有名なクラブなのですよ。
通常、18歳未満は、クラブに入ることが出来ないのですが、ガールズガードライブが行われる時は大丈夫。
若者に人気のクラブで、性と生について考えてみるのも、かっこいいと思いませんか。
気軽に、遊びに行ってみましょう。


FAQ

 K-domについて良くある質問をまとめてみました。

Q : なぜコンドームなの?
A : みんなのセックス文化、避妊、アゲインスト・エイズ、感染症、セクシュアル・マイノリティ、いろんなテーマを私たちはK-domにもりこみました。

Q : なぜ三田祭で?
A : この慶應キャンパスで、若い人たちがどっと集まる時間と場所だからです。

Q : K-dom、 ネーミングはどこから?
A : 三つのK。まずはKEIO、残り二つはドイツ語のつづりで、KONDOM(コンドーム)、KOMMUNIKATION(コミュニケーション)です。

Q : 中身は違うの? 安心して使える?
A : ジェクスというメーカーの市販品です。安心して使ってください。

Q : ペンマーク、デザインに入れていいの?
A : 学生総合センターに確認済みです。三田祭実行委員会にも企画・デザインを提出済みです。私たち塾生のアイデンティティですから。

Q : 儲かりますか? 利益はどうするの?
A : 利益を出すよう、営業活動を頑張ります。出た利益はつぎの活動資金にします。

Q : なぜ売るの? 啓蒙活動なら無料配布が普通じゃない?
A : 「売り買い」がこの社会の倦むべきコミュニケーション形式だとは思いません。高飛車な啓蒙は嫌です、私たちが何かを伝えたい、その気持ちを「記念」に買ってくれれば嬉しいと思ってます。

Q : 子供たちも三田祭には来るんじゃない? これ何、って聞かれたら?
A : 幼稚舎、普通部、中等部、それ以外の子供たちに、セックスやコンドーム、感染症や中絶、そんなことを隠す必要はまったくありません。安西塾長の『感動教育』の一環だと思ってます。ゼミにいる内部進学者は「塾に性教育はない」と嘆いてました。
Q : HIVキャリアや、セクシュアルマイノリティ、って言うけど、「当事者」でもないのに、なんで?
A : 私たちは、ある意味でみんな当事者です。ゼミのみんなが、ひとつの「私たち」でもありませんが、当事者でない人はいません。現実の日々の生活で困難にある人の「代弁」はしません。私たち自身が、いろいろな当事者として、いろいろな位置からの働きかけを、ひとつの形にしてみたかったのです。

Q : なぜ、社会学のゼミで?
A : 現実の社会と関わる、現に生きている人たちと関わる、これが社会学の醍醐味です。それも、学術用語で表現するだけでなく、私たちがとりえる色々なツールを、たとえばデザイン、アート、営業、交渉、などなどを使って、アクションしていくこと、それこそが 「これからの社会学」だと思ってます。ちなみに、岡原ゼミのグランドコンセプトは 「社会学とアート、さらには日常生活やビジネスとの境界線を霧消させる実験的な試みを、anything goes! (Feyerabend)をポリシーに、真摯かつ陽気に行う集団、それが『私たち』です」 となってます。


About Us

 岡原ゼミの活動については公開Wikiが最も詳しいものとなっています。
 質問などがあれば、メイルまたは掲示板で受け付けております。

 慶応義塾大学文学部社会学専攻に設置された岡原正幸助教授のゼミ
 2003年8月現在、他学部他専攻の学生をふくめ、約30名ほどが在籍。参加開始年度によって、02メンバー、03メンバーに分かれる。 

 活動は、メンバーの自主プロジェクトを柱にメンバー内より集うその都度のユニットが核となり進められる。どのプロジェクトもwork in progressをフィロソフィーとしている。また、プロジェクトに関わる理論的なフォローは主にサブゼミで行っている。目下は、三田祭で行うK-domプロジェクトを中心に活動中。 

 閉鎖的な集団であるより、ネットワーキングとしてのチーム活動をめざしているので、「メンバーを退屈させない」のをモットーにします。このゼミを作り上げる過程そのものが「科学より芸術なのです」。 

 参加メンバーの募集は、冬の一斉募集のほか、随時受け付けている。04メンバーは11月以降に募集。継続メンバー以外にプロジェクト単位の参加もできる(履修者は年度単位になります)。 

岡原ゼミのフィロソフィー
 社会学を脱臼させること、それに尽きる。リアルな感覚からすれば金魚の糞のごとき「学」を壊滅的な状況に追い込み、そんな「学」を栽培してきた薄汚れてブヨブヨになった温室のビニールを引き剥がすこと、そこに、魂と生の喜びを求める。……誰が? 誰に向けて? 誰のために?

 担当者のオカハラが言うには、「自然のものだと思われているような〈感情〉や〈身体〉の社会的構築を謳う、あるいは〈障害者〉の自立生活に立ち会う、それらをベースにして、ひと、もの、ことば、そして出来事が、この社会で配置される場面を僕は探ってきたのですが、今現在は、それらのいわゆる〈社会学的〉な営みにあって、〈探る主体〉として制度的に構築されていってしまった〈僕〉〈岡原〉〈社会学者〉の脱・再構築をめざして、みずからのリアルさに準拠するような、実験的な試みをしようとしています。たとえば、感情公共性の立ち上げ、非言語式社会学の創案、社会/学/アートもしくはソシオインスタレーションの制作、社会調査の演劇的批判、極私的社会学の創作、などがそれです。またそれらの試みの総称として《社会彫刻》を、ドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスより借用しています」、ということらしい。

 感情社会学、ポスト構造主義、ポストコロニアリズム、文化精神医学、ジェンダー論や差別論、さらには現代アートの動向、そんなことを頭に入れておかなければ、このゼミの輪郭はつかめない。けれど輪郭をつかんでも仕様がない。サブゼミを除けば、ろくに本も読まず、カメラやビデオやスプレー、あるいはターンテーブルで勝負しようとするからである。このバトル、白黒つけても仕様がない。まずはストリート、そこでのサバイバルが緊急課題だから。

 個々の学生の多様な欲望を決めつけたり死なせたりしないよう、むしろ踏ん反り返った「学」こそ、敵にしましょう。ただ、逆に言えば、このゼミに参加するには強い欲望こそ必要かもしれません。自分のやりたいこと試したいこと、たとえそれがXXXだとしても、それをプロジェクトとして表現し、共にあるメンバーにそれを納得してもらい、どこからか経済的・社会的な資本を調達し、具体的に転がしていく。ネットワークやコミュニケーションを誘発・誘導し、自省しつつも、内に閉ざさず、つねに他者の前にみずからを投げ出し、他者のリアクションをリアルに受け止め、それをプロジェクトの本体に滑り込ませる。ときにプロジェクトは思わぬ変態を遂げ、予想外の出来事の連鎖となる、それをも楽しみ、その変態に身を寄せ、「自分が生きる」という生のプロジェクトの糧とする。それは「欲望」あっての話だから。

 ゼミ活動には「形式」を求めません。その都度の欲望が互いに絡み合うなか、時間や空間、社交や関係、言説や身体、運動や実践、そういった形式がアドホックに生成されるのを好むからです。ゼミメンバーの「所属」も問いません。欲望が所属に先行するからです。